STEP 1 / 楽器を選ぶ

形は似ている。
中身はまったく違う。

「ハーモニカ」と呼ばれている楽器は、大きく3種類あります。学校で配られたあれ、映画で聴いたあれ、ブルースで唸っているあれ。名前も見た目も近いのに、出せる音も、得意な曲も、値段も別物です。

ここでは3つを同じ縮尺の図と、同じ人が続けて吹いた動画で見比べます。読み終わったとき、最初の1本が決まっています。

3種類のちがい

まず、大きさが違う。

写真だとどれも同じくらいに見えますが、並べると差は歴然です。下の図は3種類を同じ縮尺で描いたもの。実際の寸法にもとづいています。

複音・クロマチック・10穴ハーモニカを同じ縮尺で並べた図 複音ハーモニカは全長およそ18センチで上下2列に穴が並びます。クロマチックハーモニカは全長およそ15センチで右端にスライドレバーがあります。10穴ハーモニカは全長およそ10.5センチで穴は10個です。 複音ハーモニカ 21穴・全長 約18cm クロマチックハーモニカ 12穴・全長 約15cm・レバー付き 10穴ハーモニカ 10穴・全長 10.5cm(メジャーボーイ実寸) = 実寸 9cm
図はハーモニカ大学が作成した模式図です。全長は各種の代表的な寸法にもとづいています(10穴は TOMBO メジャーボーイ No.1710 の公式寸法 W105mm)。穴の数や形はメーカー・機種によって変わります。
複音ハーモニカの模式図。上下2列に丸い穴が21組並んでいる 上下1組で「1つの音」 わずかにずらした2枚のリードが同時に鳴る

上下の穴が縦にペアになっていて、2枚のリードが同時に震えます。この「ズレ」が、あの独特のうねりを生みます。

日本でいちばん親しまれてきた形

複音ハーモニカ

トレモロハーモニカ / Tremolo Harmonica

上下2列に並んだ穴の1組が、ひとつの音になっています。わずかに音程をずらした2枚のリードが同時に鳴るので、音がゆらゆらと震えます。これがトレモロ。日本で「ハーモニカ」といえば長らくこの音でした。

唱歌、童謡、歌謡曲。誰もが知っているメロディが、そのまま似合います。学校で配られた記憶があるなら、たぶんこれです。半音(♯・♭)を出すには、専用の機種を使うか、キーの違う楽器に持ち替えます。

穴の数
21〜24(上下2列)
全長
約18cm。両手で持つ大きさ
得意
唱歌・童謡・歌謡曲
苦手
半音の多い曲、転調
クロマチックハーモニカの模式図。四角い穴が12個並び、右端にスライドレバーが付いている 押すと全部が半音上がる 四角い穴が1列。1本ですべての調に対応できる

右端の丸いボタンがスライドレバー。押し込むと、並んでいる音がまとめて半音上がります。

1本で12音すべて

クロマチックハーモニカ

Chromatic Harmonica

右端にレバーが付いています。押すと音が半音上がる。つまり、この1本で12音すべてが出せます。曲を選ばない、というのがこの楽器の最大の武器です。

ジャズ、クラシック、映画音楽。半音の多い複雑なメロディも、持ち替えずに吹き切れます。そのぶん本体は重く、値段も上がり、レバーと息を同時に扱う難しさがあります。最初の1本にするには、少し荷が重い楽器です。

穴の数
12〜16(レバー付き)
全長
約15cm。厚みがあり重い
得意
ジャズ・クラシック・映画音楽
苦手
最初の1音までが遠い
10穴ハーモニカの模式図。穴が10個並び、4番から7番がドレミファソラシドの1オクターブになる 123 45 67 8910 4〜7番=ドレミファソラシド 手のひらに収まる。片手でも吹ける

穴は10個だけ。しかも真ん中の4〜7番に、ドレミファソラシドがそのまま並んでいます。覚える範囲がはっきりしています。

ハーモニカ大学が最初の1本にすすめる

10穴ハーモニカ

ブルースハープ / テンホールズ / ダイアトニックハーモニカ

手のひらに収まります。穴は10個。ひとつのキー(調)の音だけが並んでいて、そのぶん覚えることが少ない。3種類のなかで、いちばん早く「曲になる」のがこれです。

とくに真ん中の4番から7番は、ドレミファソラシドがそのまま1オクターブぶん並んでいます。ここだけ覚えれば、知っているメロディが吹けます。息を強く吸って音を下げる「ベンド」を覚えると、ブルースやロックの表情が一気に増えます。

穴の数
10。番号を覚えるだけ
全長
10.5cm。ポケットに入る
得意
ブルース・ロック・ポップス・フォーク
最初に買うなら
C調(ハ長調)を1本

学長が使っている機種を見る

3種類の比較。値段はいずれも入門機の目安で、機種によって上下します。
  複音ハーモニカ クロマチックハーモニカ 10穴ハーモニカ
穴の数 21〜24(上下2列) 12〜16(1列+レバー) 10(1列)
全長 約18cm 約15cm・厚くて重い 約10.5cm・63g
1本で出せる音 そのキーの音階(半音は不可) 12音すべて そのキーの音階+ベンドで半音
音の印象 2枚のリードが震える、柔らかい響き まっすぐで澄んだ音 息づかいがそのまま出る、粗い表情
似合う曲 唱歌・童謡・歌謡曲 ジャズ・クラシック・映画音楽 ブルース・ロック・ポップス・フォーク
最初の1音まで 穴が多く、狙う位置を探す レバーと息を同時に覚える 穴10個。数分で音が出る
持ち運び ケースごと鞄に ケースが必要 ポケットに入る
大学のすすめ 2本目以降に やりたい曲が決まってから まずこれ。C調を1本

耳で確かめる

3つの音を、続けて聴いてみる。

表で読んでも、音は分かりません。同じ人が3種類を続けて吹いている動画があります。まずこれを1本。6分半で、違いが耳に残ります。

Maki Harmonica【山口牧ハーモニカチャンネル】

3種類のハーモニカを紹介します! ブルースハーモニカ、複音ハーモニカ、クロマチックハーモニカ

3本を1本ずつ手に取って、同じ奏者が続けて吹きます。大きさの違いも、音の違いも、6分半で分かります。この記事の順番とほぼ同じ流れです。

6分41秒 約16万回(2026-08-29 時点)

複音とクロマチックは、それぞれの専門家が話しているものを1本ずつ。10穴の話は、このあとの学長の演奏で聴けます。

山下 伶(クロマチックハーモニカ奏者)

そもそも、クロマチックハーモニカって何?

クロマチックが気になった方へ。プロの奏者が、レバーの役割とこの楽器で何ができるかを話します。買う前に聴いておくと、迷いが減ります。

8分39秒 約5.2万回(2026-08-30 時点)

学長の1本

平松悟が、TOMBO メジャーボーイを使う理由。

10穴ハーモニカにも、たくさんのメーカーと機種があります。そのなかで学長がステージでも教室でも手に取るのが、トンボ楽器製作所の「メジャーボーイ No.1710」です。名前のとおり、この楽器はよく売れている定番機ですが、選ばれている理由は素材と設計にあります。

  • 1
    樹脂のボディは、湿気で狂わない

    ハーモニカは口に当てる楽器です。木のボディは水分を吸って膨らみ、季節や場所で吹き心地が変わります。メジャーボーイのボディは樹脂。雨の日でも、冬の乾いた部屋でも、同じように鳴ります。毎日持ち歩いて、そのまま吹ける。

  • 2
    気密性が高く、ベンドがかけやすい

    メーカーは、樹脂本体の設計によって「高い気密性を保ち、ベンド奏法を容易にしています」と説明しています。息が逃げないぶん、少ない力で音が下がる。初心者が最初につまずくベンドで、楽器のせいにしなくて済みます。

  • 3
    平均律。メロディがきれいに並ぶ

    10穴ハーモニカには、和音がきれいに響く調律と、単音のメロディがきれいに並ぶ調律があります。メジャーボーイは後者の平均律。歌のメロディをそのままなぞる吹き方に向いています。唱歌もポップスも、音痴に聞こえません。

  • 4
    63グラム。持ち歩ける重さ

    幅105mm、重さ63g。ポケットにもポーチにも入ります。練習が続く人と続かない人の差は、才能ではなく「手元にあるかどうか」です。この軽さは、そのまま練習量になります。

  • 5
    キーが揃っている。曲に合わせて増やせる

    メジャー18調子、マイナー12調子。C調から始めて、やりたい曲のキーに合わせて買い足せます。低い音域の Low C まであるので、同じ機種のまま表現の幅を広げられます。

TOMBO メジャーボーイ No.1710

ボディ
樹脂製
カバー
ステンレス
サイズ
W105 × H30 × D18 mm
重量
63 g
プレート厚
0.9 mm
調律
平均律
キー
メジャー18調子
マイナー12調子
価格
4,840円(税込)
生産
日本製

出典:トンボ楽器製作所 公式製品ページ
www.tombo-m.co.jp/harmonica/10holes/1710.html
確認日 2026-08-29。価格・仕様は変わることがあります。

ハーモニカ大学は、特定のメーカーから対価を受け取っていません。ここに書いたのは、学長が実際に使っている機種と、その理由です。別のメーカーの10穴ハーモニカでも、C調であれば大学の教材はそのまま使えます。

この楽器で、こう鳴る

学長の演奏で聴く。

平松悟

TOMBO メジャーボーイ Low C出ました

同じメジャーボーイの、低い音域のモデル。同じ機種でもキーが変わると、ここまで印象が変わります。C調に慣れたあとの世界です。

2分02秒 約1,800回(2026-08-29 時点)

平松悟

卒業写真をジャズアレンジでハーモニカでやってみました

穴が10個しかない楽器で、ここまでできます。知っているメロディがジャズになる。「10穴は簡単な楽器」という思い込みが、2分で消えます。

1分58秒 約1,900回(2026-08-29 時点)

メジャーボーイ(Key: C)を準備する まだ楽器がない人は、Web配列表で音を確かめる

メーカー公式ページが開きます。買うのは楽器店でもネットでもかまいません。選ぶのは Key: C の1本です。

STEP 2 へ

楽器が決まったら、ドレミを探す。

1本目が決まれば、次は音の場所です。10穴ハーモニカは4番から7番にドレミファソラシドが並んでいます。学長がその出し方を説明している動画が2本あります。手元に楽器があるなら、一緒に吹きながらどうぞ。

平松悟

ブルースハープ ドレミファソラシドのやり方

まずこれ。どの穴を吹いて、どの穴を吸うのか。2分22秒で、ドからドまでが通ります。

2分22秒 約2,900回(2026-08-29 時点)

平松悟

3分で吹けるブルースハープレッスン ドレミファソラシドの巻

短時間で復習したいときに。3分半でひと通り。練習前にもう一度流す用です。

3分33秒 約5,200回(2026-08-29 時点)

その先へ:ベンドを覚えたくなったら

吸う息で音を下げる「ベンド」は、10穴ハーモニカの表情そのものです。学長が18年前にアップした講座が、いまも6万回以上再生されています。ドレミが通るようになってからで大丈夫です。

平松悟

平松悟ブルースハープ講座 ブローベンド編

吹く息で音を下げるブローベンドの説明。ネット上でいちばん多く観られている、学長の講座動画です。

2分39秒 約6.1万回(2026-08-29 時点)